存在の羽音

気ままに。自分と向き合う場所。自分を見つける場所。チラシ裏の独白。

淡い空の色

 

 もうすぐ自由な休暇ともお別れ。忙しい日々がやってきて目の前のことでいっぱいになるとただそれだけに生きてしまう。そうなると余裕も失われ、気を張って、大変なことも多くなる。ずっとそうだと疲れてしまうけれど、人は不思議なことにその環境に間もなく適応するものだ。慣れは心を軽くする。大変なことは同時に新鮮さと楽しみ、充実なんかも与えてくれる。臆することなく、前に進もう。

 最近読んだ本の中で甚く心にふれ気に入ったものが、講談社文芸文庫の「生と死の光景」という短編をまとめたもの。特に島比呂志「奇妙な国」は引き込まれた。生活が保障されているという前提で、死を美徳とするある国が、生活の担保がなくなった途端、住人達はそれまでの美の感覚を忘れただ生きることに必死になり、浅ましくなり……その果てに見た景色とはなんだろうか、というお話。この浅ましさこそが人間らしさ、とも言えるのだろうけれど。退屈は生活が担保されていることを前提として起こる感情なのだろう。食うものに困れば退屈はなくなってしまう。退屈を感じるのは人だけなのかもしれない。